« 脱兎 | トップページ | 不動 »

巡り合せ

いつだったか

本屋さんでガイドブックを捲りながら

私が高野山に登ってみたいと言っていたことを

あなたは覚えているだろうか

またも遡ること昨年の十一月末

結婚記念日旅行と称して

高野山へ

Pict1673

かろうじて少しばかり紅葉が残る山並みに

冬の足音をそこここに感じながら

去りゆく秋を慈しむように懸命に愛でる

奥の院までの参道は

Pict1667

人がひっきりなしに参拝に来られているにも拘らず

話し声や足音が全て不思議とどこか然るべき場所に吸収され

凪いだ水の中にいるような気持ちになる

水かけ地蔵一体一体に柄杓で水をかけながら

少し緊張していた自分に気付き深呼吸する

今回新たに旦那ちゃん用にと購入した御朱印帳は

気高き程に美しき色、茄子紺

記念すべき一ページ目は奥の院

Pict1706

Pict1671

日暮れが迫ってきていたので

今宵のお宿

藤の森不動温泉だるま湯へと向かう

アトピーに効能があるとされる療養温泉である

荷物を降ろすなりグラス一杯飲泉し温泉へ

平日だったので貸切状態が嬉しい

露天風呂に綺麗な落ち葉が浮いていて

それを頭にのせてどろん

といって到底化けられるわけもなく

お楽しみの晩御飯は紀州地鶏鍋

Pict1677

飛び跳ねた形状で塩焼きされた岩魚の体を

お箸でくいくいと押さえ尻尾を持って骨を一気に引き抜く

Pict1680

いつもお魚を綺麗に食べる旦那ちゃんに褒められる

お給仕して下さる従業員の方々もとても親切で温かく

皆一様にお肌がつるりとされている

聞くと、温泉水を化粧水代わりに吹き付けておられるとのこと

これは是非に真似させて頂こう

眠る前にまた露天風呂に浸かる

薄暗い照明の中

広い湯船からは湯気がふわふわと踊るように立ち上り

頬を夜の冷気が撫でてゆく

ゆったりと身体の力を抜いて身を委ねるようにして

お湯をお肌に摩り込みながら気付けば小一時間経過している

簡素な設えのお部屋には

すでにお布団が二組並んで敷かれていて

窓際では漆黒の夜空を見上げながら

旦那ちゃんがさっぱりとしたお顔で珈琲牛乳を飲んでいる

するとドアが控えめにノックされ

ご丁寧にも大女将がわざわざご挨拶にお越し下さる

普段は土日しかお顔を出されないそうなのに

この日は夜勤の従業員さんが腰痛とのことで代わりに来られたのだという

これも不思議な縁である

高野山に立ち寄ってきたことを話し

旦那ちゃんが鞄からするりと御朱印帳を取り出すと

大女将は高野山の方角に向き直って正座し

御朱印帳を頭上に高々と掲げる様にして頭を深く下げてからご覧になる

旦那ちゃんはこの時「この人は本物だ」と直感的に思ったという

初対面の方には人見知りしてしまう私も

なぜかつらつらと対峙している悩みを話し

大女将の柔らかな和歌山弁に包まれるようにいつしか涙しており

自分でもひどく驚いたのだった

私が泣き止むのを待って

ゆっくりと立ち上がりお部屋を出て行かれる

オーラのある凛とした佇まいの美しい後姿だと思った

「焦らず努力しなさい」

肝に銘じよう

枕が変わると眠れない性質は毎度のことではあるが

やはり例にも漏れず今回も何度かお手洗いに起きる度に

絶え間なく聴こえるだるま石渓谷を流れる川のせせらぎに

癒されると同時に大きな懐に抱かれているような安心感をも得るのだった。

|
|

« 脱兎 | トップページ | 不動 »

外へ」カテゴリの記事

コメント

高野山いいわね♪わたしも行きたし、癒されたし☆

随分とペースの違う生活をしてるから、時々ここを覗くと貼絵みたいな感覚です。

リラックス出来て良かったね♪

投稿: あやせ | 2011/02/02 20:07

久しぶりのブログ。
読んでいて涙でたよ。
どんな美しい人にも、どんな美しい世界に生きる人にも。
等しく悩みはあり。
軽々しく『貴女はいいよね』なんていう人の言葉に傷付きながらも。
確かに自分は恵まれていることもちゃんと理解しているものだから。
自分の傷や悩みは甘さやワガママなんじゃないかと、
また自分を追い込み、傷つけ―

けれど誰かに必要とされる喜びを知ってしまったから。
傷だらけで、泣きじゃくりながらも、それでもスキップしながら、生きていける。

 これからも、
私と一緒に、生こうね。

投稿: ロマン | 2011/02/02 22:01

>あやせ様

貼絵みたいな感覚??
この旅行は不思議な縁に恵まれた特別なものやったけど、私は旦那ちゃんと居ると基本こんな感じです。

高野山は魂が震えるようなとてつもないパワースポットであったよ。

投稿: 水玉 | 2011/02/07 18:11

>ロマン様

こちらこそだよ、ロマンさん。
いつもあなたは時にささくれ立ってどうしようもない私の気持ちを上手に汲み取ってくれて、まるでオブラートに包むように保護してくれるよね。
今回のコメントもそう。
私の性格をよく分かってくれてるなーって思う。
有難うね。

一人じゃどうしようもないから、誰かと生きていきたいと強く思うんやろうね。
うん、一緒に一生懸命に生こう。

投稿: 水玉 | 2011/02/07 18:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 脱兎 | トップページ | 不動 »