« 生 | トップページ | 白 »

聖域

柑橘類の中でネーブルが一等好きだ

そう口に出して言う機会は今迄一度も無かったけれど

事実そうなのだ

五年前に亡くなった旦那ちゃんの祖母の写真を本棚の上に飾っている

セピア色に色褪せつつある中で

幼い旦那ちゃんを抱いて私の知らない若かりし頃のおばあちゃんが立っている

写真立ての前に温泉帰りに買ってきたネーブルを一つ無造作に御供えすると

「有難う」

と旦那ちゃんは微笑み

「ばーちゃんはネーブルがすごく好きやったんや」

と遠い昔を思い出すかのように目を細めながら付け加えた

その流れで初めて私もそう口にしたのだ

硬いネーブルの皮に爪を突き立てると

瑞々しい果汁が迸りそこいらに香を放つ

おばあちゃんも一緒に食べてくれているかのように

中学に上がる頃まで

祖父母と三人並んで川の字で寝ていた

大抵私が眠るまで祖母は毎晩私の話に耳を傾けてくれた

学校でのこと

お友達とのこと

稀に先に寝入ってしまう時があって

そんな時

祖母がちゃんと息をしているかどうか

恐る恐る口元に小さな手を翳し

胸元に耳を近づけたものだ

録画しておいた『西の魔女が死んだ』を観た

祖母は私のことを大好きでいてくれるのが当たり前で

疑うことなくそう信じていて

その存在そのものが今も私のかけがえの無いサンクチュアリだ。

10センチ程の積雪

Pict1744

実に三年振りのことだという

「昨日の晩、珍しく豪勢なもの(蟹すき)食べたからちゃう?」

Pict1751

そんなことを言い合って笑いながら

普段より30分程早く旦那ちゃんは出社していく

雪の白に照らし出された朝に

一瞬にしてしんと冷えた空気を味方にして。

Pict1707

西の魔女が死んだ [DVD] 西の魔女が死んだ (新潮文庫) 春になったら莓を摘みに

|
|

« 生 | トップページ | 白 »

外へ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 生 | トップページ | 白 »