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希望

助手席でオールレーズンを齧る

実家までのドライブのお供だ

寒の戻り

やはりそう易々と春はやってこないのだ

Pict1779a

祖父が再入院した

じじ様が実家で過ごしたのはおおよそ三ヶ月

父と母にとって初めて直面する介護をしながらの日々

父は精力的に祖父をお世話し至極饒舌になった

母は今迄以上に甲斐甲斐しく一時も立ち止まることなく転々としていた

祖母は自分ことで精一杯で祖父から毎夜繰り返される小言や我侭についに音を上げた

祖父は儘ならない自分の体を嘆き痛みと戦っていた

それぞれが慣れない心労と病気の間で

どんなにか大変だったろうと想像するに余りある

病室のベッドで眠るじじ様

掛けられたお布団の膨らみは嵩低く

入れ歯を外した寝顔は本当に老人然としていて

少しでも場を和ませたくて

「くしゃおじさんみたい」

なんて笑って口走ってしまう

病院に再入院させると決断したことを

父は「逃げ」たんじゃないと私に言った

自分達ではどうすることも出来ない無力さ

そして悔しさを

痛感しての言葉だったのだろうと思う

それがじじ様を少しでも楽にする為の

今の私達が出来うる数少ないこと

だと言い聞かせる

時間が指の間からさらさらと滑り落ちていくのを

見ていることしか出来ないのだろうか

本当の気持ちに

言葉はいつも追いつけなくて

自分の気持ちにさえ

未だ自分自身が追いつけないくらいなのだから

嫌になる

Pict1799

実家から持たせてもらったお米

わざわざ搗いてくれたお餅

新聞紙で包んだお野菜に紛れていた湿った父からのお手紙

母が買ってきてくれたパンやお菓子

その中にまたもあったオールレーズン

親子やなーと思いながら

夜ご飯をお腹一杯食べさせてもらったのにも拘らず

口卑しく帰りの車中でも一口

また一口と

齧るのである。

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