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深夜にお家に帰って来たじじ様の枕元に正座して

「おかえりなさい」と声をかけた

「やれやれ、やっと帰って来れたわ」と言いながら今にもむくっと起き上がりそうな気がして

いつまでもその場を離れられずにいた

妹がじじ様の頬に触れ「おじいちゃん冷たくなってる」と言ったので悲しくなって聞こえないふりをした

あのあたたかな体温を忘れない為に

その時から私は一切じじ様に触れるのをやめようと心に決めた

Pict1804

明けて昼頃

葬儀社の方々が来られ湯灌の儀式が執り行なわれた

お風呂が大好きでいつも長風呂だったじじ様

久しぶりのお風呂はさぞ気持ちが良かったことだろう

ネクタイを締め、こげ茶色のスーツできめたじじ様を見て

祖母は「おじいさん、見違えたわ」と言い、薄く笑った

やっぱりじじ様は茶色がよく似合うと私はぼんやりとそんなことを思っていた

Pict1807

その夜

セレモニーホールでお通夜が執り行われ

祭壇に飾られた遺影の中では

少し頬がふっくらとしたじじ様が晴れやかに笑っていた

それは私の結婚式の日に撮られたものだった。

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一憂」カテゴリの記事

コメント

この度はご愁傷様でした。
おじいさんのご冥福をお祈りします。

優しい家族に囲まれてきっと幸せだったでしょうね。
水玉ちゃんと家族のみなさんの優しさがいつも伝わってきます。


投稿: アトマツ | 2011/05/10 15:57

>アトマツ様

アトマツさん、思いやり溢れるコメントを有難うございます。

亡くなるその日まで、じじ様の側にはいつも家族の誰かが居ました。
与えられた命を懸命に生ききることの尊さを身をもって教えてくれました。

投稿: 水玉 | 2011/05/14 20:51

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