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夫婦

「実はこの後…」

とついに旦那ちゃんが切り出す

「蛍観賞ツアーを予約してるんですよ」

とにんまり

「だから歩き易い靴で来るようにとか、やたらとお天気の心配してたんや」

と驚く母

この顔が見たかったのだ

言いたくて言いたくて仕方がなかった私である

夜のお楽しみはこれから

Pict1161

同日宿泊されていた年配のご夫婦と大女将に見送られ

女将さん自ら車を運転して蛍の観賞ポイントまで送って下さる

そこかしこで無数に点滅と残像を繰り返す儚くも美しい蛍の光は

しっとりと夜の帳が下りた渓谷にこだまする怖いほどの川の水音に

オブラートをかけてしまったかのように静寂をつれて来た

カメラのアクセスランプや携帯の光を

仲間と勘違いしたのか

蛍がすぐそこまでやってきてくれた

「ほら」

旦那ちゃんの掌の中で発光し続ける小さくて尊き命の灯

「こんなにゆっくりさせてもらったのはほんま久しぶりやわ」

感嘆の溜息をつきながら母はそう呟いた

宿泊施設に戻る頃には

母は女将さんといつの間にかすっかりと打ち解けていて

お顔からは疲れととげとげしさが消えさり

リラックスした表情の中に穏やかな笑みが浮かんでいた

また二人して浸かった露天でも蛍の光を楽しみ

敷いて下さっていたお布団に横になりつらつらと取り留めもない話をした

母が寝入る直前に

「水玉には過ぎた婿さんやな」

としみじみと優しいお顔で言うので泣けてきた

旦那ちゃんが褒められることが

自分が褒められるより

ずっとずっと嬉しいなんて

こんな気持ち知らなかったよ

その言葉を何度も反芻して

大切に心の中に仕舞って

私はいつも通りなかなか寝付けずに

このままこの夜が明けなくてもいいなと生まれて初めてそう思った

もうちょっとだけ続く。

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