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恋慕う

出張とはいえ

旦那ちゃんと三週間も離れて暮らさなければならない

ということを

私は軽く考え過ぎていた

久々の一人暮らしを満喫するぞー

などと浮き足立っていたのはたったの二日間で

机の上に残された

「水玉ちゃん、いつもありがとう」のメモを

お財布に忍ばせては

ことあるごとに眺めて溜息をついているといった全く情けない状態だった

Pict2318

我が家と実家を行ったり来たり

永遠に続くかのようなそんな日々に

途方に暮れ始めた頃

電車に乗る前に

駄目元で親友にメールを送った

「これから実家に帰るところ。少しだけでも逢えたらいいなと思うんやけど…どうやろう?」

そんな内容だったと思う

「逢いたい」

そう遠慮して率直にもの言えない私を知っている彼女は

薔薇色の愛車をぶっ飛ばして最寄りの駅まで駆け付けてくれた

お昼寝をしそびれた小さなこねこ(娘)ちゃんを後部座席に乗せて

Vivienne Westwoodのハンカチを首元に小粋に巻いて

小さな手には白くてふわふわの梟のぬいぐるみ

それはいつか私が彼女を想って選んだプレゼントだった

親友の遺伝子を受け継ぐものが小さな人になって現れたものだから

一目で好きになってしまった

しゃがんで初めましてをして

お散歩をしながら紅葉した落ち葉を拾った

「はい、どーぞ」

そう言ってこねこちゃんに手渡したらおずおずと受け取ってくれた

「ちょうだい」

と手を出したら

もう片方の手に大事そうに持っていた葉っぱを手渡してくれた

「ありがとう」

心からそう伝えると可愛らしくはにかんでくれた

Pict2317

申し訳なくなるほどに温かい気持ちを貰ってばかり

それが駅の周辺をぐるぐると歩き回る長い長いお散歩の始まり

花壇に植えられた色とりどりのパンジーに立ち止まっては

「きれーえ」と呟き

指先でちょんちょんと労わるように花弁に触れる

お仕事帰りの人達を乗せた電車が行き交う度

「わあ!」と目を輝かせ

たまに「パパ!」と発する

急な坂道で転ぶと軽く擦りむいた自分の掌よりも

転がっていった梟を気遣い埃を払う

二歳にもならないこねこちゃんは

もうすでにものを大切にする気持ちや人の痛みを知っている

いつかそれが強さや優しさに変わるんだよ

「あなたのお母さんはね、あなたを身籠ったことでより強く優しく生まれ変わったんだよ

そしてね

私はあなたのお母さんのことが大好きなんだよ」

これまでも、これからもずっとね。

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